Thirteenth floor

ボードゲームとデジタルゲームの区別

2021年8月7日10:24, ボードゲーム

概要

ボードゲーム(アナログゲーム)とデジタルゲームの違いは、電気を使っているかどうかだけではないです。
ゲームを実現するために使っている素材や手法が異なっているだけでなく、ゲームに触れるプレイヤーに対する期待も違うと筆者は考えます。

ボードゲームはルールをプレイヤー側で解釈し変更していくことを期待していると考えます。
このことが、ボードゲームを長く遊び続けられるゲームにしています。

時間に対するルールの固定

ボードゲームとは電気を使わずに遊べるゲームと定義されることが多いかと思います。(※1)

ただ、最近はインターネット上でボードゲームが遊べるサービス(ボードゲームアリーナなど)やNintendo Switchで遊べるボードゲームもあります。 電気を使わないで遊べることはボードゲームにとって重要ですが、電気を使っても遊べるようになりました。

ここで考えたいことは、ボードゲームとそれ以外のテレビゲームやソーシャルゲームは何が違うのかということです。

筆者は時間に対してゲームが持っているルールが固定されているかどうかだと考えます。

テレビゲーム、ソーシャルゲーム(デジタルゲーム)

テレビゲーム、ソーシャルゲームなどのいわゆるデジタルゲームはコンピューター上でプログラムを動作させることで、ゲームを実現しています。 古くはファミリーコンピュータ(ファミコン)やゲームキューブ、最近だとプレイステーション5、Nintendo Switch、パーソナルコンピューターやスマートフォンで遊べるゲームもあります。

プログラムを動作させることで実現されているゲームだからといって、その中にボードゲームが含まれないわけではありません。 上述したように、ボードゲームアリーナで遊べるボードゲームが多くあります。

「プログラムで動作しているかどうか」は「ボードゲームかどうか」という問いに対しては重要ではありません。

改めてデジタルゲームが持っている性質を並べてみたいと思います。

  • 遊ぶためには電気が必要
  • コンピューター上でプログラムを動作させることが必要
  • 実体がプログラムなのでゲーム提供側が行うルールの変更、プレイヤーへの配布が容易

3点目に挙げた、実態がプログラムなのでゲーム提供側が行うルールの変更、プレイヤーへの配布が容易という点に着目します。 ファミリーコンピューターやゲームキューブなどの時代では、作成したプログラムをカセット(つまりCDやDVDといった記憶装置)へ書き込み配布していました。 また、インターネットが現代(2021年現在)ほど発展していないため、配布したプログラムに故障が見つかっても、故障部分を修正して再配布することが簡単ではありませんでした。 現代ではインターネットの発展とともに、カセットを配布する形式ではなく、インターネットを経由してプログラムを配布できるようになりました。 当然、修正した部分だけを配布することも容易です。

これは極端に言ってしまえば、ゲーム提供側がゲームを作っていく過程をプレイヤーへ見せているようなものです。 例え未完成のゲームであってもプレイヤーへ提供できます。 提供した後で、大きな部分や細々した部分を修正していけばよいのです。

このようにインターネットを経由して定期的にルールの変更が行われる現代のデジタルゲームは、時間に対してゲームが持っているルールが固定されていないと言えます。

ボードゲーム(アナログゲーム)

ボードゲームなどのいわゆるアナログゲームはカードやボード、コマなどを用いてゲームを実現しています。

現代デジタルゲームとの対比になりますが、実体がカードやボードなどであるため、ルールの変更は難しいです。 誤字脱字などの軽微な修正やイラストの刷新などが、改版時に行われることはあります。 初版とは全く違うような見た目になるボードゲームもあるでしょう。 ただし、現代のデジタルゲームのように、頻繁なルールの更新は行われません。

最も不可能ではありません。インターネット上で画像を公開してプレイヤーがそれを印刷するなどの対応をすればよいわけですから。

ボードゲームは、時間に対してゲームが持っているルールが固定されていると言えます。

プレイヤーへ何を期待するか

時間に対してルールが固定されているボードゲームは、ルールをプレイヤー側で解釈し変更していくことをプレイヤーへ期待しているのだと考えます。

逆に言えば、デジタルゲームは提供側がルールを変えてプレイヤーを飽きさせないようにしますよね。

ほとんどの場合、提供側はルールを変更しないため、一度作成されたボードゲームのルールは変わりません。

デジタルゲームはこのルールをプレイヤー側で解釈し変更することがどうしても出来ません。 プログラムでゲームを実現しているわけですから、そのプログラムを変えない限りルールは変わりません。

アナログゲームルールを変更することが出来ます。 大きな変更でなくても良いのです。 以下に例を示します。

  • カルカソンヌというボードゲームでミープルを置く場所について道路、都市、修道院までは分かったが、草原というルールが分からないためそれだけ除外してプレイする。
  • 宝石の煌きというボードゲームは4人までしか遊べないが、5人集まってしまったためチップ取得上限枚数を8枚に減らしてプレイする。
  • いつも遊んでいる大富豪は3から2までのほとんどすべてのカードに役(カードをプレイした際に何らかの効果が発生する)があるが、今回は8切りだけにしてプレイする。

プレイヤーが自由にルールを変更することは何を生むか

ルール変更をプレイヤーが自由に出来ること、これこそがボードゲーム(アナログゲーム)がデジタルゲームと区別される点だと考えます。

このことはボードゲームを誰とでも遊べるようにしました。 ルールを自由に変えられるからこそ、理解が難しい部分を除外して初心者や年齢の離れている人と一緒に遊びやすくしたり、人数を制限することなく遊べたりします。

ボードゲームが長く遊ばれ続けるためにも、ルール変更を自由にできることは大切です。
ルールに従ってゲームを進めても面白い瞬間に出会えないと感じ続けたプレイヤーは、そのボードゲームで遊ぶことを辞めるか、ルールを変更して遊び続けるか、どちらかを選択できます。 デジタルゲームと異なりルールを変更するという選択肢があるため、ボードゲームで遊び続けるプレイヤーもいるでしょう。

一方で大富豪やUNOに見られる通り、ルールの多様性を生み出します。 お互いに同じボードゲームで遊んでいるにもかかわらず、全く異なる、あるいは似ているけれど細部が違うルールになるのです。

これらの要素が良い、悪いかは人それぞれに思うところがあると思います(筆者はルールの多様性好きです)。

まとめ

再掲になりますが、ボードゲーム(アナログゲーム)とデジタルゲームは「ルール変更をプレイヤーが自由にできるかどうか」が大きな相違点であると考えます。
デジタルゲームのルールを変えるためには、ゲームを実装しているプログラムを変更しなければなりません。一方で、ボードゲームはゲーム開始前にプレイヤー間で話し合えばルールを変更できます。

これから先の時代でボードゲームもデジタル化が進むでしょう。 どれだけデジタル化されたとしても、アナログゲームとしてのボードゲームが持つ価値は変わらないはずです。

プレイヤーが自由にルールを変更することはボードゲームを長く遊び続けられるゲームにしています。

参考

コメント

コメント投稿ページへ